ローカリズム都市
執筆者:山本光良
(都市デザイン委員)
(昭和設計)
2009年が世界を仕切ってきた経済活動システムの根底を覆す大きな転換期になることが、2008年のグローバル経済崩壊により、現実のものとなりました。
同時に時代は地球環境問題解決のための新しい経済モデル社会を求めています。
都市が引き続き経済システムの主役を確保するためには、また地球環境問題解決の中心的役割を担うためには、新しいシステムに移行する都市のパラダイム転換が必要となります。
米国発金融経済至上主義による、限りなく集約効率化を求める競争社会、金のために世界中の金が動くグローバリズムから転換するためには、対極となる多様な分散型のローカリズムにその振り子を戻し、そして新しい経済モデルの受け皿となることが期待されています。
これまでローカリズムはグローバリズムにより保護主義、閉鎖主義という一方的な鎖国思想として排除され、淘汰され続けてきましたが、同時に環境や人間も破壊し続けてきました。
今、新しいローカリズムが求められています。環境破壊や、地球環境問題、を解決し世界経済をリードすることが出来る、今までの概念を超えた新しいライフスタイルを生み出すシステムが必要になります。
いくつかの夢のような具体的モデル案が現実化を帯びてきました、いずれも環境問題対策とセットになり一体的、継続的に進めることが可能な都市再生のグランドデザイン案です。
・人づくりー以前から「徴農制」が話題になっていますが、これは私算ですがたとえば19歳の1年間、一人200万円支給(労働対価)で、100万人として年間2兆円の予算で済みます。 このお金は生活消費として全て地方に落ち、全国にお金が回りまた新たな経済活動が生まれます。里山を回復する地球環境問題対策費になります、地産地消費が増え国全体の自給率が上がります。そして何よりも若者の精神教育になります、日本の最も大きな課題は教育です。20年後に都市が求める人材の主役となっているでしょう。義務づけなくても参加することで社会的に不利にならないような制度にする、社会がバックアップすれば実現可能です。
・もう一つ、新しいライフスタイル多住化「逆参勤交代制」という案もあります。たとえば、都市生活者が年に3分の1程度の期間、地方で暮らすことを義務付ける(そうすることがメリットになる様にする)。都市と地方のダブル居住により国全体の生活消費の配分を均質化し、同時に新たな需要を生み出してキャッシュフローを活性化させる考え方です。
都市の活動エネルギーを3分の2に減らせ、期待されているエネルギー革命のきっかけになります。自給率も地産地消で自然に上がります。IT化が進み情報の共有という意味での場所の縛りは無くなってきましたが、今までにない新しい情報化社会や文化のニーズが生まれるでしょう。 移動の交通費をゼロにする、税制を変える、規制の見直しにより地方の権限と責任を増やす、保険や年金制度等とリンクさせること等で、こういったライフスタイルに持っていくことを具体化する手法の開発は可能だと考えられます。
地方には土地と建物と生活資産(農地)が余っています、都市人口を受け入れるインフラ構築も環境負荷をかけずに少ないコストで可能です。同時に都市に新しいゆとりが出来、都市再生のきっかけとなります。都市に新しい豊かなライフスタイルが生まれ生活環境もより向上していくことになります。
具体化には、上(国)から一律の制度をつくるようなことをしないで、市民が自主的に進めていくことが出来るような仕組やインセンティブのある施策と大きな流をつくる政治の大鉈が必要です。このようなグランドデザインを実現するためには、市民の意志と創造力、そして新しい技術と知恵があれば可能です。
グーグルの世界では同じ空間と時間を共有している
セイムスケール・都市(写真左)と里山(写真右)
(写真:グーグルアースより)
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