近畿支部長メッセージ
公益社団法人日本建築家協会近畿支部
支部長 松尾 和生
真・善・美を旨に社会を未来創造するArchitectを目指して
~社会の皆さまへ
日本建築家協会(JIA)は、建築家の集まりです。建築家憲章、UIA(国際建築家連合)アコードを基にする日本の建築家代表団体としての公益社団法人です。社会の皆さまと建築家(Architect)を繋ぐ役割を持つのがJIAです。Archiは主や起源、tectは大工や技。子どもの頃、大工の棟梁を志した私は、当然のことのようにArchitectの道を進んで来ました。海外で国を識別する場合、自然環境もさることながら、その国の建築物により、国の文化性や国民性を垣間見て、その国を把握できるものです。建築士という国家資格に加え、利益相反なく社会貢献できる人、かつ、美しい空間や国の未来環境を創造する人が建築家(Architect)です。この人たちの社会的役割を可視化し、明確にすることは、全ての人の幸せな未来に繋がり、より良い社会資産を生み出します。この人たちが建築の道を日々、精進、修練することは、人を想い、美しく住み良い環境を創り、自然を大切にすることに繋がります。この人たちは、真善美を基に、誠実に公益性に尽くすことをお約束します。その公益性、倫理性を担保し、真に社会のために創造活動するArchitectの職能集団がJIAです。昨今は、環境社会が叫ばれ、脱炭素社会に向けたカーボンニュートラルやSDGs、ジェンダーレス等の取り組みが世界中で進められていますが、この様な新しい概念や価値観を形にしてゆくのもArchitectの社会的役割です。
このArchitectは、社会環境や価値観の変化に柔軟に対応しながら、自然のあらゆる生物、地球環境のために思索し、建築技術のみならず、人の明るい未来の道を示し、日々、修練するプロフェッショナルな日々を送ります。
歴史的伝統的建築群の文化集積地にある近畿支部
近畿は古の都、多くの寺社建築を有し、日本の歴史、文化が集積する地です。この地での建築家の役割は大きく、古建築や寺社仏閣などオーセンティックな建築を守っていくこと、そして、その文化性を継承してゆくことが公益的に求められます。それは単に形に捉われるのでなく、その中に潜む形而上的、心理的、宗教的、歴史・文化的な側面も掌握し、建築を創るのです。そのためには、建築家は確かな倫理観と審美眼を持ち、日本建築の文化性をヘリテージする人として公益的に活躍します。さらに、子どもたちに建築文化を伝え、その大切さ、面白さ、その心を伝えることは日本文化継承には重要であり、日本社会、文化にとって、次世代のArchitectを育てることも大切です。Architectは社会に建築を創り、または、建築の真正性を示し、国家の伝統を継承しますが、JIAにはその社会的使命があります。資本や経済に翻弄されながらも、この建築家たちが集うJIAの真の社会的価値観や倫理観を生して行きたいと考えています。新しい価値観、本来あるべき価値観は、Architectであれば、これまで日々、普通にインクルーシブに考えてきています。これからの人類は、本質の時代へ向かうことが要求されます。人と自然を大切にするArchitectの集うJIAは未来価値創造集団として、人類のために創造力を発揮します。文化性高い近畿にあるJIAとして、これからも社会に貢献して参ります。
建築は神事、清らかな精神が潜む一本の線は万人の手を動かす
~Architectの皆さまへ
戦後、高度経済成長からスピード社会が到来し、一気に文化から文明へシフトしてきました。この中で、精神から物質へ、建築家による真の社会的功績を理解しにくいままに戦後80年近くが過ぎ去った様にも感じます。日本の社会環境は、自然力の驚異や破壊、ウイルスによるパンデミックに翻弄されながら、人の価値観を変え、空間住まい方を変化させてきました。建築家(Architect)という社会的職能は幅広いものですが、国民に正確に理解していただくことがとても大切です。JIAは、日本のArchitectを分かりやすく、発注者や社会全般にその職能を見える化する必要があります。
建築家の行動は、国の未来に大きく関わり、文化的資産の形成に影響が大きく、公益のためにも社会的責任は重大です。発注者の代理人として、その職能を発揮しながらも、社会的により良い方向へ建築や街づくりを進めていきます。
建築家の心は、利他的、客観的、そして、時には自らの犠牲も払います。その心は、いつも穏やかで醒めたものであるはずです。その反面、その情熱は、周囲の人たちとの強い共感力を持ちます。それは知識や技能、デザイン力、計画力、マネジメント力よりも大切です。
建築家の思想やデザインは、清らかな精神から生み出されます。あらゆる周囲の方々、社会に対して、素直で誠実、謙虚な姿勢こそが大切です。その反面、社会的に永続性ある強い信念を持ち、邁進する原動力、精神力も併せて必要です。静と動、自と他、無と有、光と影とは相反するものではなく一対であり、その間で建築空間を創造します。
建築家は一つとして自分自身で建築の部位を作らず、たくさんの人たちの力を結集して建築を創ります。
建築は多くの方々の労働力、命により叶う神事です。そのため、清らかな精神が必要です。
建築家には、いつも晴れやかな心、人々を幸せな笑顔に導くことのできる健康な精神が必要です。
建築家の描く線は、長い経験と修練から生まれる厳選された一本です。
その一本の集積から生まれる美しいシナリオ、スケッチ、図面は、万人の手を動かす原動力を秘めています。
- 更新:2022年10月14日
- by