支部からのお知らせ

  • 投稿:2008年8月5日
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【連載】都市点描

湖都の風景
2008夏 都市点描(谷氏写真)
執筆者:谷 祐治
(谷祐治まちなみデザイン研究所)
滋賀県が一昨年度に実施した「湖国風景づくりワークショップ」でのアンケート結果によると、「景観のために規制を強化すべきだと思いますか」との質問に対し、9割近くの方が「規制を強化すべき」、「少しは規制を強化すべき」と回答された。
具体的な規制内容については「建築物の高さ」と答えられた方が最も多く、相次ぐ高層マンション建設に対する懸念と考えられる。
これらを背景に県は「ふるさと滋賀の風景を守り育てる条例」の見直しを決定。滋賀県景観計画が今年度中に施行される運びとなったが、湖岸に面して市街地を有する市の多くは景観行政団体であり、広域的な視点での風景づくりは「景観行政団体連絡協議会」の設置など、景観法に基づかない独自の取り組みによって実施される事となった。
法的拘束力がない中での理念共有。各市とも景観法に基づく主体的な取り組みを実施しているが、大津市については琵琶湖岸にて建設が進む高層マンションの大半が位置しており、都市計画法に基づく規制の実現が喫緊の課題となっている。
大津市景観計画においては、歴史上重要な資産や周辺の自然環境との調和を図る事などを目的とし、眺望景観保全地域を設定。重要眺望点から山並みの稜線・琵琶湖への見通しを確保することで高さの抑制を図っているが、効果のある地域は限定されてしまう。
また、大津市は30年以上前に、市街化区域の約8割を占める住居系用途地域を第1種から第3種の高度地区に指定。商業地域においても石山寺周辺地区を第4種高度地区に指定するなどしてきたが、需要不足傾向の中でも高層マンションは建設されつづけており、更なる高さ規制を望む声は今も高まっている。
高次な都市機能の集積を図るべく、商業系用途地域の土地利用を誘導してきた大津市であるが、高度利用のあり方に関して検討を始めることが決定されるなど、ここに来て新たな局面を迎えている。現在、都市計画部関係各課のメンバーからなるプロジェクトチームが設立され、市民団体・職能団体と継続的な意見交換会が行われている。検討委員会の設置を念頭に置いたもので、市民との合意形成に向けた取り組みと評価できよう。
最終的には景観審議会、都市計画審議会に諮問がなされ、高度地区の指定等がなされなければダウンゾーニングは実現しない。ただ、全国10番目の古都において、100年後を見据えたまちづくりが静かに動き始めた事だけは、間違いなさそうだ。
景観を視覚に映る実態を客観的に捉えたものとし、風景をより広い範囲を主観的、情緒的に捉えたものと位置づけるのであれば、地域の実情に応じた高さ規制をしていかなければ良好な風土は生まれないと考える。
一人でも多くの市民が当事者意識を持ち、まちづくりにおいて優先すべき事項を確認し合う。こういった作業の継続が風土を継承していくことに繋がり、良好な景観・風景を創出するのだと信じ、これからも活動を続けていきたい。
2008夏 都市点描1
建設が続く高層マンション
2008夏 都市点描2
源氏物語ゆかりの石山寺周辺地区
2008夏 都市点描4
比叡山の麓から眺めた大津
2008夏 都市点描3
重要眺望点からの景観(名神高速道路:大津SA)

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