JIAデザイントークはひとりまたは複数の建築家がプレゼンテーターとして作品を発表し、それに対して複数のコメンテーターが様々な観点から批評、質疑、コメントを行い、さらに時には聴講参加者も参加しての「トーク」、つまり議論・会話・対話を通じて、通常の講演会などでは知りえない、建築家そして建築に関する知見を深める場です。建築家を志す学生、既に実務についている方々のご参加をお待ちしております!
イベント名称 | JIAデザイントーク2015(第3回) |
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開催日時 | 2016年1月22日(金)18:30~20:30 |
講師 | 光嶋裕介氏(光嶋裕介建築設計事務所) |
内容 | ■JIAデザイントーク2015(第3回) |
参加対象 | 一般 |
定員 | 80名(申込先着順) |
参加費 | 1,000円(学生無料)、協力会員は25名まで無料(先着順) |
申し込み方法 | 申込書またはE-Mailにてイベント名、参加者氏名、連絡先を記入のうえJIA近畿支部事務局までメール(jia@bc.wakwak.com)またはFAX(06-6229-3374)にてお申し込み下さい。 |
申込書 | 申込書 |
会場 | 大阪市中央公会堂 地下1階大会議室 |
住所 | 大阪市北区中之島1-1-27 |
地図の表示 | 大阪市北区中之島1-1-27 |
主催・共催等 | 主催:(公社)日本建築家協会近畿支部 建築デザイン研究会 協賛:(株)総合資格、JIA近畿支部協力会員一同 |
CPD単位 | 2 |
お問い合わせ先 | JIA近畿支部事務局 TEL.06-6229-3371 e-mail jia@bc.wakwak.com |
【レポート】
JIAデザイントーク2015(第3回)
2016年1月22日(金)18:30~20:30
プレゼンター:光嶋裕介
コメンテーター:高砂正弘、本多友常、岩田章吾 司会:青砥聖逸
スケッチ、ドローイング、建築
光嶋氏の建築活動はスケッチ、ドローイング、建築のトリニティ、それぞれ独立した、しかし相互に関係した3つのフェーズによって構成されている。驚くべきクオリティで描かれたスケッチは旅先などで出会った、建築や街の風景を身体に刻み込むフェーズである。ドローイングは、スケッチによって刻み込まれた空間感覚を自由に発想・展開するフェーズで、「ジャズのインプロヴィゼーションのよう」に全体がなく、さまざまなファサードの集積であるが、そこから見える風景が建築作品のヒントとなるフェーズでもある。このドローイングから見出される世界は、モダニズムの「統一的な」「何かを排除して調整された秩序」による世界ではなく、もっと「ドロドロ」している(筆者の印象では、スケッチ、ドローイングともに外観的、風景的であり、内部空間的なものがあまりなかった。氏の建築にあるどこかがらんとした印象はこういった点から来るのであろうか)。建築のフェーズにおいてはその「ドロドロした」世界の多様なグラデーションの中で、氏が自らの建築を語る上でのキーワードである「雑多なものが同居する空間」として、モダニズムのアンチテーゼとしての建築を構想される。建築は哲学者内田樹氏の道場兼住宅である神戸凱風館、如風庵、住宅のリノベーションである旅人庵、建設会社の社屋と、ロックバンド、アジアン・カンフー・ジェネレーションのコンサートツアーのステージセットの5つのプロジェクトが紹介された。
雑多なものが同居する空間、Provokeする空間
「雑多なものが同居する空間」の、雑多なものとは、形態的なものではなく、むしろ、様々な行為を“provoke”する場のイメージのようなものであり、そういった行為の場としての空間イメージが全体を志向することなく集積しているといった印象であった。筆者が感じたのは、雑多なものの同居の仕方で、氏の建築では、フランク.O.ゲーリーの自邸のような、各要素の切断面を意識的明示した「つぎはぎ」にするのではなく、断片の境界線が溶けてしまっており、それが氏の建築の特徴ということもできる。この点は実際に新旧の同居するリノベーションにおいて、より顕在化していた。
質疑としては、「雑多なものが同居する空間」といったときに、建築が混沌に飲み込まれないための方法論の有無が問われた。本人の説明からは、現時点では、スケッチ、ドローイングというプロセスを介在させることで、自らの暗黙知を高めたうえで、設計するという形を取っており、現時点では方法論化したいという気持ちと、方法論化することで限定されることへの危惧が相半ばしているようであった。また、この点に関して、吉村篤一先生とのやり取りの中で、モダニズムのアンチテーゼという立ち位置から、自らの作品はブリコラージュであり、そうである以上、全体を関連付けるような方法論は不要であるという見方も提示された。
空間経験としては、住まい手、利用者に、何らかの感情、感覚、行為を引き起こす(Provokeする)ような空間を作るように心がけているという解説があり、本多友常先生から、建築がそのように刺激的である必要があるのかという問いに対し、現代人はいろいろな感覚を閉じているので、それを喚起することで、生命力を高めたいという説明があった。
筆者は、当初は、氏の建築を構築性といった強さを回避する「弱い建築」をめざしているのではと考えていたが、むしろ、今回のトークを通じて、構築性といった強く、鈍い(鈍く、遅く、重い)形式性に依拠するのではなく、直接的に人に様々な感情、感覚、行為を喚起しようとする、フラジャイルな強さのようなものをめざしているように感じた。
(岩田章吾/建築デザイン研究会長)
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