こんにちは。JIA近畿支部広報委員(協力会員委員長)の延原利明(株式会社フジワラ)です。
正会員と協力会員をつなぐ連載Catalyst(カタリスト)。
第6回は、澤村産業株式会社の本社に社長の茶谷昭彦さんと営業開発担当の岩井由起子さんを訪ね、塗料と塗装工事についてお聞きしました。今回のインタビュアーは、荒木公樹さん(空間計画)です!
澤村産業さんとは、約2年程前に知り合いました。それからは、塗装のことでよく相談にのっていただいています。JIA入会のきっかけは何ですか?
JIA入会のきっかけは、澤村産業創業者の澤村会長が松田平田設計の上村晋常務にお誘いをいただき、2018年3月に入会させていただきました。
昨年、大阪地域会が塗料に関する勉強会を開催し、澤村産業さんに不具合事例も含めて設計者が注意すべきポイントをわかりやすくお伝えいただきました。その際、茶谷社長は塗装全般について 多くの引き出しを持つ方との印象を持ちました。改めて塗装の目的についてお聞かせください。
塗装の目的とは、建築分野における塗装は建物を保護し、美観を高め、機能性を向上させるため、といえばそれまでですが、
- 例えば色だけでも目的やシーンにあった色で彩ることで、色の効果で心を鎮めたり、和ませたり、また緊張感や尊厳なども奏でることができます。
- そして塗装することで、紫外線や雨、錆、熱、炎からも物を保護をすることができます。
建築塗装は、他分野と異なり、金属・コンクリート・木など塗装面の種類が本当に多く、それだけに奥の深い分野です。
塗料は、顔料とそれをつなぎ合わせる樹脂、溶剤が基本的な構成となるわけですが、最近の塗料の傾向をお聞かせください。
塗料に使われる樹脂と言えば、アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素の順で評価が高くなります。
欧米では、シリコン樹脂の方がフッ素樹脂よりも評価が高いといったように、日本国内との違いもあります。
以前はペンキと言えば植物油などで希釈された油性塗料や合成樹脂調合塗料を指していましたが、各メーカーのたゆまない努力により塗料の分野が確立されていきました。
溶剤については、施工性に大きく関わりますが、VOC対策や臭気などの環境性能の観点から、水性化・弱溶剤化が進んでいます。
また、塗料業界は、関西発祥や大阪に本拠地を置くメーカーが多いことも特筆されます。
澤村産業さんは、文化財や、大規模公共施設、宇宙開発などのプロジェクトにも、関われているとお聞きしました。そのあたり、詳しく教えてください。
創業時は工業用塗料が専門でスタートいたしました。
宇宙開発関係は、創業間もないころに種子島のロケット発射整備塔の塗料を出荷させていただきました。創業者が広く営業活動をしていたことの証です。
地域の建築塗装業者さまにもご愛顧をいただけ、現在では大規模建築工事や集合住宅の大規模改修工事用の建築塗料も多く扱っております。
また国宝や重要文化財をはじめとする木造建築では、近代塗料とはひと味違う伝統的な塗料の販売に関わらせていただいております。
近代塗料を扱いながらもこのようなものも伝えていきたいと考えております。
宇宙事業団種子島ロケット整備塔
ダットサンで種子島まで。どうしても必要となり追加の塗料を種子島まで配達にいきました。
関西国際空港へも納品しました。
澤村産業さんのこれからの取り組みを教えてください。
需要があるにもかかわらず、採算ベースに合わないという理由で市場から姿を消していく塗装材があります。それによって今まで伝統的に培われてきた技術や文化も消えるかもしれません。
微力ではありますが、そういったものを残すことに役に立てる仕事に関わっていき、そして伝統を継承している方々のお手伝いさせていただける存在になれればと考えています。
近代建築の中にも伝統的な塗装をご提案できたり近代的な塗料も含めて、伝統的な塗料を守っていきたいと考えます。
また、先進技術を持たれた顧客と、その技術をビジネスに展開できる顧客とのマッチングなどにも積極的に関わっていきたいと思います。
どんな産業も同じことかも知れませんが、商社では物流が大きな問題となってきています。
ストレスなくお客さまに商品を届けられることを考えるのも私たちの責務と考えています。
建築家のみなさまが集まる会において、代理店だからこそメーカーに関らずいろいろな塗材を広くご提案できる立場を強みに、お役に立てる存在になっていきたいと考えております。
本日のインタビューには、澤村産業さんから茶谷社長だけではなく、営業開発担当の岩井さんにもご同席いただきました。一言お願いいたします。
対面での集まりを持つことができない中、このような対談の企画に参加させていただくことができ、とても有意義な時間でした。
塗料商社である澤村産業は、BtoBサービスからBtoCへの可能性を広げていこうとチャレンジ中ですが、今回のお話の中で荒木先生からご紹介のあったUR団地でのDIY住戸の取り組みの紹介から「塗装がDIYのきっかけになる」という言葉に、これからのヒントとなるものをいただけました。
専門家・専門家でない人を問わず、塗料の選定にお困りの方がいらっしゃれば、是非お手伝いさせていただきますので、気軽にお声がけいただき、ご相談にのらせていただきたいと願っております。
カタリストに参加させていただき、普段の名刺交換だけでは伝わらない、それぞれの業務や考えが深く見え、今後が益々楽しみになりました。
インタビュアーから一言
茶谷社長から京都迎賓館への柿渋(木部の保護塗料として利用)の納品の際、柿の植林にまでさかのぼり、混ぜ物を可能な限り少なくしたものが選ばれた経緯をお聞きしました。
粘り強く本物を追い求めた結果が認められたわけですが、同時に柿渋を何回も塗り重ねた時に初めて現れる透明感の奥にある本来の色の素晴らしさに関する説明を茶谷社長からいただき、私自身深く共感しました。
古来から多くの人々の努力の積み重ねにより洗練されてきた天然由来の塗料は、現在はそのほとんどが人工材料に置き換わっているわけですが、塗り重ねによって良さが出るという発想は、表面を新しくするだけのリフォームと時間を経たものを尊重しながら価値を高めていくリノベーションとの違いに通じ、改めて塗料について勉強が必要であると思いました。
ご多忙のところ快くインタビューに応じていただいた茶谷社長と岩井さまに感謝いたします。
編集後記
茶谷社長、岩井さん、荒木さん、奥和田さん、ご協力ありがとうございました。話は約2時間、塗装業界の熱いお話しをたくさんお伺いしました、一番印象に残ったのは、文化財のお話し。昔の人はいろいろな素材を、うまく塗料に活用してきたお話しに驚きの連続でした。また、その技術を伝承、発展していく方々との取り組みを通じて、世に出すお手伝いをしていきたいという茶谷社長の思いに感銘を受けました。
付録
取材後に私(延原)だけ荒木さんの事務所のある「都住創内淡路町(設計:中筋修/ヘキサ)」へ訪問させていただきました。建築家の職住一体住居として興味深く取材しました。
すごい外観。35年前の竣工とは思えない圧倒的な存在感。
玄関入ってすぐの建具。かっこ良すぎる。
荒木さんの奥さまの奥河歩美さんがデザインを手掛けたテーブル。なんと、天板、脚などのパーツが、釘・金具を一切用いず、簡単に外すことができ、収納・移動に便利。このテーブルは、鐘を吊ることにより安定する釣鐘堂の力の流れからインスピレーションを得たフォルムとのことで、とっても安定しているのです。
こちらの棚板は、麻のテープで固定されているとのこと。すごい。
廊下は、奥さまのギャラリーに。干支をモチーフにした年賀状の原図が、素敵すぎる。
洗面所と浴室。木製建具とこだわりガラスが圧巻です。
村野藤吾が都ホテル東京のためにデザインした家具。研究者や建築家が使いながら管理していく「ムラノ家具里親プロジェクト」から引き継いだ。なんとも素敵な取り組み。
淹れ立ての珈琲をいただきながら、都住創シリーズのお話を沢山伺い、引き込まれました。また、最後には、仕事場だけでなく住まいの部分まで見せていただき、数々の納まりに心を揺さぶられました。まさに、建○探訪の渡辺○史さんの気分でした。完全な役得です。荒木さん、奥さまありがとうございました!
このように、気軽に(公益社団法人の試みなので、なるべく、商売っけなく)、正会員と協力会員との日常や、協力会員情報を紹介していきたいと思いますので、投稿してくださる方(正会員、協力会員問わず)は、お知り合いの広報委員、もしくはカタリスト担当の延原(メールアドレスnobuhara@fujiwara-l.com)まで、ご連絡ください!お待ちしております!
それでは、次回をお楽しみに!
関連記事