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  • 投稿:2021年8月21日
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Catalyst(カタリスト)第12回 材料で楽しむ住まいの発想~安田株式会社のアルミハニカム~

こんにちは。正会員と協力会員をつなぐ連載Catalyst(カタリスト)。
第12回はまさに「自然とともにある人の営み」を存分に味わえる日本建築家協会近畿支部奈良地域会長の山下先生(山下喜明建築設計事務所)の青山のご自邸(グッドデザイン賞 2011:ほとんど外の家(カゼノトオリミチ))にて、対照的な人工物のアルミハニカムの障子窓を使って材料をさまざまな観点から楽しませていただいたレポートです。

通常は軽量でありながらも強度を確保する材料として見えないところで使われるアルミハニカムコア。「ほとんど外の家」のご紹介と併せて最後までお楽しみいただけると幸いです。
(製品の納品:安田株式会社 仮家、同行:株式会社フジワラ 延原さま、東リ株式会社 中野さま)

青山のご自邸風景

本日は最高気温31度の真夏日のはずなのですが、植木鉢から移植されてのびのび枝を伸ばした木々が涼しいトンネルを作ります。

木々の切れ目でふと横をみると美しい構図の向こうにも美しい木々と空が広がります。

宙に浮いたような入り口を入ると…確かにそのまま外(オープンエアリビング)でした!

そこでふと横をみると…「時間」から解放されます。

さて、まずはアルミハニカムコア

アルミハニカムコアは通常はパネルの中に仕込まれて見る機会はあまりありませんが、山下先生からは「こんなに綺麗なのに隠すなんて勿体無い」とのお言葉を頂戴してしまいました。

これがアルミハニカムコア。パネルで挟むことで軽量でありながら強度のある建材になります。大判の庇等ができるんです。

ハニカムと言えば6角形。ですが、そこで終わらせないところが山下先生。

「アルミだからこそ光を反射しつつ見る角度や距離、コアの厚みによって目隠しにもなる。細かいコアなら硬く冷たいイメージのはずの金属が柔らかく優しいレースの織物のように見える。それを建築上の機能として活かすことができると一層面白い!」

下記の写真の中央が1/4インチセルで、両側が3/4インチセルです。横から見ると、目が細かくなるといっそう「すりガラス」のようです。3/4インチセルでは少し横から見る程度であれば反対側が見えますね。角度がつくと見えなくなっていきます。

角度によってはコアがないみたい!(中央)

向こうを「覗こう」と近づくと、真正面部分で限定的にしか反対側が見えません。ハニカム厚にもよりますが、覗こうといっそう窓に近づくと、「ちょっと怪しい人」になってしまいますね(笑)!距離で見え具合が全然違うんです。

部屋の内側から見ると、アルミのハニカムコアが外の光をたくさん反射してくれて明るくなりました。
和紙の障子とはまた違った明るさです。

これらのアルミハニカムコアの楽しさを建築に活かしたのが今回の納品です

下記写真内の図面のピンクのところに今回の1/4インチセルの内障子窓をとりつけます。真正面からしか向こうは見えませんので「家の中にいることができる人」しか内障子窓の向こうは見えません。外部の方は間にある木の手前までしか入れませんので、ハニカムコアの厚みに阻まれて中は見えません。

家の中にいる人が外を見ようとしたときには、ハニカムコアの厚み部分が木も含めた日々刻々と異なる外の景色をランダムに光を反射しながら映してくれるわけです。飽きないですね!

さて、季節は夏!東海エリア某住宅(Lightdrops-Ⅲ)さまにて実際に取り付けていただいたお写真をいただきました。

窓の正面で向こうを見ると…

近づくと…

斜めからになると…

大人でも窓の前でいろいろ歩きながら遊んでしまいそうです。

さらに時間を忘れていろいろと

1/4インチセルの前に1/2インチセルを置いてみました。面白い現象ですね。

イカ釣り用の照明が気になりますね。大きい!

映っているのは「向こう側」なのか「こちら側」なのか…「入り乱れて」いますね!こちら側には人が3人いるのです。なぜか人間が一部消えてその後ろの背景が映っています。楽しい「目くらましならぬ目隠し」ですね。「目隠しならぬ目くらまし」(笑)?アルミならではですね。

さて、ご自邸の「お外」でないところも拝見!

モダンもあります!美しい色とライン!人工物と自然の美しい調和でした。

さて、中学生の頃から物作りが好きで金物屋さんに出入りしていた山下少年。金物屋の前を通ると店のおばちゃんがよく声をかけてくれたそうで、「山下くん、えぇベアリング入ったよ!」「あ、ボールベアリングかぁ…テーパーローラーベアリングないの?」
…どうやら山下少年は天体望遠鏡とその架台・赤道儀を作るためにベアリングが必要だったようで。

それが…今までの写真の中に写っているんですね!(ヒント:廊下の奥にあるんです)

おばちゃん!そのベアリング少年は今や日本の建築業界を引っ張る建築家でいらっしゃいますよ!

学生時代のベアリング少年が東急ハンズ愛に走るのは想像に難くなく。東急ハンズを目指して渋谷まで出て行っていたそうで。とすれば、江坂に東急ハンズができると聞いた時の少年の喜びようは想像に難くなく!

しかもアルミハニカムとの出会いがこの江坂の東急ハンズだったそうで。「江坂の東急ハンズに売ってたんよ~。何これ?綺麗やなぁ…って。昔の東急ハンズにはわくわくしたねぇ」

昔の東急ハンズさま、有難うございます!(安田株式会社より)

さて、上の写真、カウンターテーブルが「すーっ」と移動したかと思えばキッチンが出てくるんです。キッチンの背後には冷蔵庫などがスマートに収納。

さて、入口を挟んで反対側。まさに「ほとんど外」にある廊下から入ると…

障子の横桟は太鼓張りの中にあるんです。

ふと横を見ると…「避けて通れない体重計」付の洗面所。レアな人工物設置空間ですが、この右側もまたすごいんです。風流で。

先にあるのは蚊帳。夏にベープマットが要らない生活(フマキラーさまごめんなさい!)を忘れていた気がいたします。

実はグッドデザイン賞はじめいろいろな賞を受賞されたこのご自邸、もとはこのような山林の傾斜地だったそうで、土地売却を企画された方もびっくりでしょうね!

木々に囲まれて文字通り大変涼しいひとときでした。

夏日にもかかわらず「暑い」と汗を拭く機会は全くありませんでした。実際、客室(和室)以外はクーラがないないのですが、要らないですね。

「植物とか星とか自然も好きだけど工業製品も好き!」が凝縮されたご自邸でした。

ちなみに、キッチン&リビングの窓、台風がきてもガタガタ言わないそうです。周りの木々が家を守ってくれるそうです。風雨になっても雨が横から吹き込んでこないそうです。

温暖化で爆弾低気圧や猛烈な台風、スコールなどの昨今ですが、改めて人の営みにおける木々の有難みを知りました。

「自然とともにある人の営み」

美しい実践を拝見させていただきました。

蚊取り線香の香りが外からの爽やかな風に乗って家の中を気持ちよさそうに「ほとんど外」のお家の中を通ってゆきます。思わず時間を忘れて空間に身を任せる午後のひと時でした。とても、素晴らしい建築でした。

延原さま(株式会社フジワラ)より一言

五感が刺激され、なつかしさが全身に感じられました。当日、山下さんからいただいた事務所のパンフレットに、「懐古心が湧き起こるような、感性が喜ぶ空間」との表現がありましたが、まさにその通り。貴重な体験をさせていただきました。

中野さま(東リ株式会社)より一言

非常に楽しい時間を過ごさせていただきました。細部にわたる設えや、自然・人工との関わり方みたいなもの触れ大変興味深かったです。是非またじっくりと味わいたいと思う、そんな建物でした。

編集後記

山下先生のご自邸につきましてはまだまだご紹介し尽くせないほどの多くの工夫と発見が。「何かご一緒できるものがあれば」と試行錯誤を繰り返しながら長く粘り強くお付き合いいただきましたことに心より御礼申し上げます。

奇しくも昨年秋よりアルミハニカムパネル庇の製造工場が安田グループに入りました。事業承継から間がなく、物件のサポートに走り回る日々でしたので、このように素直にアルミハニカムの楽しさに接する機会をいただけたのは嬉しい限りでした。重ねて御礼申し上げます。是非紅葉の秋にアルミハニカムコアとともにまたお邪魔させていただく機会があれば嬉しく存じます。

今回は安田株式会社の納品のタイミング等諸事情により、仮家にて編集させていただきましたが、お忙しい中駆けつけて下さった延原さまと中野さまの心強いご支援にも篤く御礼申し上げます。

このように、気軽に(公益社団法人の試みなので、なるべく、商売っけなく)、正会員と協力会員との日常や、協力会員情報を紹介していきたいと思いますので、投稿してくださる方(正会員、協力会員問わず)は、お知り合いの広報委員、もしくはカタリスト担当の延原(メールアドレス nobuhara@fujiwara-l.com)まで、ご連絡ください。お待ちしております。

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