支部からのお知らせ

  • 投稿:2011年1月6日
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年頭にあたって夢想したこと

sibutyo
執筆者:小島 孜
(社)日本建築家協会近畿支部 支部長
明けましておめでとうございます。年頭の挨拶ということですが、年末にお会いした出江さんのことから話を始めさせていただきます。会長職から解放された出江さんはお元気そのもので、現在も意欲満々設計活動に取り組まれていますが、会長時代にやり残したことも含め、JIAに対する熱い思いを投げかけられました。さらに、地方の声が抑圧され充分な議論がなされていない今の理事会を、近畿支部が先頭に立って糺すよう発破をかけられました。おっしゃる通りで耳の痛い話だったのですが、それとは別に「アトリエ建築家なしに日本の建築文化の発展はあり得ない」という言葉が印象に残りました。


確かに、戦後日本の建築文化を牽引してきたのはアトリエ派の建築家たちです。しかし残念ながら、現在のアトリエ事務所を取り巻く状況は、極めて厳しいものがあります。その背景には、経済的要因だけでなく人為的な要因がありそうです。例えば姉歯事件以後の国の対応を見ても、総合的な技術力とトラブルに対する処理能力において、個人よりも組織の力を上位とみなし、過剰すぎる建築士の数を減らすためには、「零細なアトリエ事務所の切捨て」をやむなしとする姿勢が垣間見られます。
こうした流れが、①ハウスメーカーやデベロッパーが主導する住宅供給システムから疎外され、②実績重視のプロポーザル方式によって公共建築の設計者選定からも疎外され、③リスク回避に主眼を置いた安定志向の民間建設投資からも疎外されている、現在のアトリエ建築家の状況につながっているように思えます。

この流れの背後には、アトリエ建築家に対する世間の厳しい目があり、それを無視することはできません。建築家としての技術力を高める個々の努力に加え、JIAとしての、総合力と信用力を高めるためのサポート体制が不可欠ですが、こうした受身の対応だけではまだ不十分で、攻めの姿勢を打ち出さないと流れは変えられません。
現在の状況をもたらした要因が人為的なものであり、高度成長社会から安定社会に移行した現在では、量より質、つまりは建築の文化的側面が重要になると考えるならば、私たちの声をそろえることで、逆向きの流れを人為的に創り出すことができるはずです。
例えば①の住宅供給システムに関しては、自然を破壊して造成されたフラットな宅地に商品化住宅が建てられ、均質的な景観と疎遠な人間関係が生まれている現状に対し、地形や既存樹木を生かし周辺環境を配慮した住宅をインフラ整備と一体的に提案する、こうした建築家としての働きかけを連続的に連係して行うことで、流れを変えていかなくてはなりません。
また②に関しては、個人レベルの発想力と組織的な技術力を組み合わせた、新しい発注方式の提案が求められつつあります。③に関しても、提案性とリスク回避を両立させる設計チーム、コラボレーションの新しい形が模索され始めており、建築家の提案力が要請される条件が整いつつあるように思えます。建築家の力量をアピールする魅力的な提案を積極的に行うことでこうした流れを引き寄せ、アトリエ事務所を含む、建築家全体の活路を見出していきたい、出江さんの話に感化され、年頭にあたってこのようなことを夢想しておりました。
夢想だけで年頭のあいさつを終える訳にはいきません。現実に戻りますと今年はいよいよ「UIA2011東京大会」の年になります。ようやく具体化してきたプログラムには魅力的な内容が揃っています。大会を失敗させないために強制されるのではなく、積極的に参加して楽しむことができるよう、支部としての企画を立てていきますので、是非とも大会に参加していただきますようお願いいたします。

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