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  • 投稿:2026年8月23日
  • by 北條豊和
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「THE DIALOGUE」 建築家事務所訪問 Vol.5

【執筆者】
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建築家 川上真誠(クラウドアーキテクツ) 敬称略 日時 2026年7月25日

参加者(青年部会)  池井健、眞野サトル、田辺弘幸、谷岡拓、西本寛史、邊見栄俊、北條豊和、松本和也

オブザーバー(建築家) 髙橋勝

 

今回は、2018年にクラウドアーキテクツを設立し、関西学院大学や大阪工業大学で非常勤講師も務める川上真誠さんにお話を伺いました。建築設計にとどまらず、ランドスケープデザインやカフェの運営など、領域を横断して幅広く活動する川上さんの建築に対する考えに迫りました。

 

ダイニングで川上さんを囲む、和やかな取材風景

 

〇 海外遊学の経験や、志柿敦啓建築設計事務所、ティーハウス建築設計事務所で受けた影響について教えてください。

大学卒業後、アルジェリアのサハラ砂漠を現地の遊牧民トゥアレグ族とラクダと一緒に8日間旅をしたり、ムザブの谷などの集落からヨーロッパまで、約半年かけて巡った経験が、現在の活動の根本にあるそうです。海外を巡る中で「やっぱり世界は多様であると言いますか。どこの国に行っても、そこの環境に応じた個性というか、キャラクターがある」と感じたとのこと。「建築を考える際も、これが当たり前とかではなくて、その環境に合ったものをダイレクトにやればいい」と学んだといいます。独立前に勤務した志柿敦啓建築設計事務所とティーハウス建築設計事務所については、「どちらも結構放任主義だったので、自分で学んでやるしかないっていうものなのだというのを叩き込まれた」と当時を振り返ります。特にティーハウスの所長、槻橋修さんから限界を超えて仕事に向き合う姿勢や、「『建築ってのは意地なんだ』と言われた事が一番残っていますね」と、建築家としての姿勢を強く学んだそうです。

 

〇 計画の初期段階で敷地を読み解く際、特に重視していることは何でしょうか。また、配置やボリューム、外部空間との関係は、どのようなプロセスで決めていくのでしょうか。

設計の初期段階について、「明確にこれをこうしているというよりかは、ほとんど感覚的なところが大きいですが」としつつ、集落のあり方を引き合いに出し、「集落っていうのは、まずその土地固有の環境があって、その環境の中でどうやって建築が共存していけるか」と、敷地環境を起点とする視点を重視しています。「クライアントの要望と同じくらいのウェイトで、敷地がどういうことを言っているかみたいなことにはかなりウェイトを置いている」そうです。そのうえで少し広域の敷地模型をつくったり、グーグルアースで広域の環境を調べたりしながら、その環境にどんな建築を建てるのが良いか探っています。すごく社会の変化が早い現代において、川上さんは「崇高なインフラとしての建築を建てたい」と語りました。「建築作品として完成されたものではなく、パイプ椅子が置かれたり、手摺や壁が増設されたりなど、計画時に想定していなかった変化や使い方にも許容できるような強度のある建築を作りたい」と、変化に寄り添う骨格づくりへの意識を語りました。

 

〇 オリジナルデザインと既製品、自然素材と工業製品を組み合わせるなど、ディテールにおいて気をつけていることは何でしょうか。

オリジナル家具と既製品、自然素材と工業製品を組み合わせる際のデザインについて、一つの空間でも「こっちはナラの突板で作っていて、こっちはポリ合板みたいな形で分けている」と、素材の使い分けを細やかに意識しています。塗装やポリ合板についても、「ちょっと白やベージュを混ぜてマイルドに、優しい感じにするとか、近似色で何枚もサンプルを準備して慎重に選んでいます」と、空間が調和するよう色味を丁寧に調整しているとのこと。造り付けの家具であっても、空間に完全に一体化させるのではなく、「あくまでも建築に家具が入ってきている」「取り替え可能なものとして、あえてポリ合板でやる」こともあるそう。「唐突に『全然合ってないやん』ってことにはならないようにしないといけないので、そこにはめちゃめちゃ注意はしています」と、異なる素材を共存させる工夫について語りました。

クラウドカフェを見学しながら川上さんの説明を受ける 

高さを秀逸にコントロールした外観

 

〇 設計事務所に一般の人が訪れやすくなることは、地域との関係にどのような影響を与えていますか。また、ランドスケープデザインで意識していることを教えてください。

併設されたカフェについて、「カフェで稼いでいこうっていうよりかは、もうちょっと地域の方とかと接点を作って、気軽に相談できるような環境を作っていきたい」と語ります。また、「住むことと働くことが連動した、郊外の住まい方というか生き方を見つけられないかな」と、実験的な試みでもあるとのこと。和歌山の道の駅「フードハンターパーク」のランドスケープデザインでは、さまざまな専門家や職人と協働しました。「人の居場所を作るという意味では(建築もランドスケープも)同じ」としつつ、「ランドスケープでは完全な平らな場所とかは存在しないので、自然の微妙な変化を受け入れて、活かしていく」と語る、自然と調和する姿勢が印象に残りました。

 

〇 さまざまなプロジェクトで多くの方と協働されていますが、複数の方と仕事をする際に気をつけていることはありますか。

「むしろ1社単独の案件の方が少ないんじゃないか」と語るほど、多様な協働を行っている川上さん。現在は岡場駅前広場の設計において、かつて勤務したティーハウス設計事務所や建設コンサルのウエスコと3社でJV(ジョイントベンチャー)を組むなど、領域を越えた体制でプロジェクトを進めています。さまざまな専門家や他者と仕事をする上で気をつけていることについては、「それぞれ自分のちゃんと考えを持ちつつ、対話しながらやっているって感じです」と、フラットでありながら芯のある協働の姿勢を語りました。

 

〇 ロゴからランドスケープ、店舗運営まで、スケールを横断してデザインする中で、これからの時代における建築家の役割や定義はどのように変わっていくとお考えですか。

建築物というハードをつくる前後の仕組みづくりにまで踏み込む中で、藤原徹平氏の言葉を引用し、「『建築家は一石五鳥ぐらいのことをやらないといけない』と話しました。これからの建築家は、「現代の建築家はもうちょっと集落へ帰っていくというか、産業革命以後の近代化の流れは世界中どこでも転用可能なものを世界中に反復してきたけれども、それは解像度が粗い世界で可能であったことで、これからはもうちょっと解像度を上げていかないといけないんだと思うんですよね」と、地域ならではの解像度の重要性を説きます。「一つの建築物だけではなく、点が連鎖するアンカーを打っていくみたいなことができると、新しいことができるのではないか」。さまざまな主体が関わる中で、建築家は「政治とかだとトップダウン的になるじゃないですか。建築家はもうちょっとボトムアップ的というか時間はかかっちゃうけど、ちょっとずつの変化を起こしていけるような強さがあって、そういう事が結果的に一番影響を与えられるかもしれない」と、新たな職能の可能性を力強く語りました。

クラウドアーキテクツ見学 

クラウドカフェで懇親会

緑豊かな遊歩道のようなアプローチ

 

今回、川上真誠さんの事務所をJIA近畿支部青年部会のメンバーで訪ねました。世界を巡った経験から生まれた集落的なアプローチや、インフラとしての建築を目指す独自の考えを、川上さん自身の言葉から直接伺い、深く触れることができました。私たち建築に携わる者だけでなく、広く一般の方々に向けても、これから「THE DIALOGUE」を通して建築家の熱意と職能を発信する機会をつくっていきたいと考えています。今後ともよろしくお願いいたします。(記事:北條豊和)

   
イベント名称 「THE DIALOGUE」 建築家事務所訪問 Vol.5
開催日時2026-07-25
建築をつくる仲間たち