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建築家 森田一弥(森田一弥建築設計事務所)敬称略 日時 2026年1月24日
参加者(青年委員会) 池井健、倉知寛之、眞野サトル、田辺弘幸、谷岡拓、西本寛史、邊見栄俊、松本和也
オブザーバー(建築家) 阿曽芙実、石上芳弘、出江潤、髙橋勝
今回は、京都・静原の豊かな自然と古い家並みが残るこの集落に拠点を置き、設計から施工、さらには地域づくりまでを一貫して手がける建築家・森田一弥さんに、そのユニークな歩みと建築への想いを伺いました。
既存の雰囲気を最大限に生かしながら造られたゲストハウスの前で
〇 どのような経緯で静原を拠点とされることになったのでしょうか
学生の頃から、都市で建築設計するというよりは「集落」で何かできないかということを考えていました。また、改修の仕事が多かったので、材料や道具をストックする場所が必要でした。スペインに行くにあたり、ちょうど静原で良い物件を見つけたことが、移住のきっかけです。
〇 左官職人の道に入ったきっかけと、独立するタイミングで工務店などの選択肢はあったのか教えていただけないでしょうか
偶然です(笑)。大学院時代、修士論文を出してから現場で働けるところを探していたら、後輩が「しっくい浅原」を紹介してくれました。職種は問わず、とにかく現場をやりたかったんです。大学院卒業後、左官職人として5年勤め、2000年に設計も始めました。
職人時代から図面を描きながら設計と施工の両方を手掛けていましたので、工務店として独立するという選択肢はあまりなかったですね。どちらかというと設計施工のスタンスで全てやりたいと考えています。図面が書けなくても施工技術があれば建物は出来てしまいますが、スペインに行った理由は「設計事務所」のあり方を学びたいと思ったからです。 現地ではエンリク・ミラージェスの事務所に籍を置かせてもらいました。ヨーロッパの左官技術を知りたいということでスペインに行ったのですが、リノベーションという分野でもスペインがおもしろいということでミラージェス事務所に行き着いたのです。
〇 森田さんは左官を学び、手を動かすプロセスを重視されていますが、手の建築はこれからの建築界に対し、どのような変化をもたらせると思いますか
集落での建築の仕事は小さな仕事しかありません。しかし、設計だけじゃなくて運営・施工も含め全て受けることによって、仕事としても成り立ちやすくなるし、長いスパンで集落と関わり続けられるようになります。 私の教えている京都府立大学でも、学生に向けて文化財を扱う職人さんを紹介して、現場でアルバイトをするなど手を動かす経験を提供するようにしています。うちの学生は職人、現場監督、設計と、多岐にわたる分野に就職しています。手を動かして建築をつくることに参加することによってコンピュータでは分らない現場ならではの気づきを体験し、建築設計にフィードバックさせていくことが大事だと思います。
〇 築100年を超える建築物のリノベーションや、新築においても屋根は瓦を用いて軒を深く出したり、RCの建物でも庇がついていたりなど、時間の経過を感じさせるような建築の佇まいという点で、リノベーション・新築を設計する際の設計手法の違いや向き合い方などの違いはありますか
新築だから新しい、古民家だから古いという訳ではなく、私は「時間の設計」と呼んでいるのですが、古い技術や建築形式など多様な「時間のパラメーター」を埋め込むことによって人間が感じる時間の感覚を操作しています。「御所西の町家」もそうですし、新築の建物であっても同じように時間の奥行きを感じられる空間を目指しています。
〇 バルセロナやスイスなど海外での活動から、建築デザイン、特に設計手法などに受けた影響などはありますか
時間を感じない空間はつまらないと思ったのは、バルセロナでの生活経験が大きいです。私の設計では、造っているプロセスを空間に表現することも重要なテーマですが、それはミラージェスの建築から学んだことの一つです。
また、各地の民家や、スイスの共同パン窯のような独特な「生活風習」にはいつも影響を受けていますし、そうした知恵をどのようにして現代の建築や生活に取り入れるだろうかといつも考えています。
〇 建築における「土」という素材を、森田さんが“現代的に扱う”うえで最も大事にしている視点は何でしょうか
左官職人の頃は土は「仕上げ」という考え方でしたが、その後「構造体」としての可能性を考えるようになり、さらにその後「蓄熱体」としても土の可能性を考えるようになりました。日干し煉瓦によるかまどがその一例です。静原だと冬季はかなり気温が下がるので空気を暖めるだけでは効率が悪く、土を利用した輻射暖房を考えるようになりました。家の内部の仕上げ自体が、蓄熱し、放熱し、断熱にもなる。温熱環境に影響する土の使い方を最近は考えています。
また、熱を扱うということはエネルギーを扱うということです。薪を使うことによって、エネルギーの循環を考えるようになりました。手元にある木材や土などの資源を効率良くエネルギーとして扱うことが建築にとって本来的だなと思います。太陽のエネルギーを使うことも大事だと感じます。
〇 これから設計したい建築や事務所の規模感や仕事の仕方など、設計者としての今後の具体的なビジョンを聞かせて頂けないでしょうか
設計、施工と分けずに、宿の運営も含めて常に「ここで何ができるか」、「集落アーキテクト」という職能を探求していきたいです。 宿のあとは、バルのようなコミュニティの核となるような場所を集落につくりたい。そして静原の集落で学んだり実践したことを外に発信していきたいです。とりあえず、いろんなところでパン窯を造りたいですね。かまどで焼いたパンは、めちゃくちゃうまいんですよ。それは、集落のコミュニティの核のひとつになると思っています。
元々車庫だった建物を改修した事務所の様子
ゲストハウス2階のLDKで取材と懇親会を
今回の取材では、森田一弥さんのアトリエをJIA近畿支部 青年委員会メンバーで訪ね、森田さんの造り上げる一つの街のような建築空間を体験することができました。
当日の静原集落は小雪がちらつきとても幻想的ななか、事務所、住居、ゲストハウスといった場所を案内していだき、自分たちの手で造るということ、材料の本質を知ることの大切さを今一度考えなおすことができました。
取材と懇親会の場では、建築家と職人の両方の視点をもった独自の取組み方や考え方を知る事ができ、設計業の枠を超えて生きるということの原点を教えていただいたようです。今回はこの熱意と職能を世に発信する機会に繋がったと感じています。
建築家のしごとは本来公益性を持ったものであり、我々建築の世界に所属するメンバーだけでなく、広く一般の方々に触れる機会を創り出していきたいと考えています。これからも「THE DIALOGUE」をよろしくお願いいたします。(記事:西本寛史)
| イベント名称 | 「THE DIALOGUE」 建築家事務所訪問 Vol.4 |
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| 開催日時 | 2026-01-24 |
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